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2024年02月24日
労務
by 吉田 重規

労働法令違反の罰金額の引き上げ(外国人労働許可制度違反)

 2022年より、労働法令違反、特に外国人労働許可関係の罰金額が大幅に引き上げられています。中でも、税務上の代表者登録者(パテント税登録証書)に掲載されている取締役については、非居住者であっても外国人労働許可の取得が必要とされ、違反には高額の罰金(約12,600ドル)が課される可能性があります。また、従来、労働省は罰金処分に対して積極的でありませんでしたが、近時は処分が科される事例が増加していますので、十分な注意が必要です。

1.罰金基準額の引き上げ
 2022年11月25日付け司法省・労働省共同省令第346号により、罰金の基準となる日給額が従来の40,000リエル(約10ドル)から倍額の80,000リエル(約20ドル)に引き上げられました。
 なお、複数の違反がある場合には、法定の上限額の5倍まで、再犯の場合には3倍までの引き上げがなされることから、注意が必要です。

2.外国人労働許可に関する違反に対する罰金額の引き上げ
 外国人労働許可に関する違反については、上記1とは別途、罰金の基準となる日給額が200,000リエル(約50ドル)にまで引き上げられています。
 外国人労働許に関する可違反として罰金の対象となるものとしては、①労働者本人の外国人労働許可不取得、②外国人従業員割当(Quota)の不申請、③労働許可を有しない外国人を雇用または従事させることが挙げられます。
 上記①〜③の中でも、特に①労働者本人の外国人労働許可不取得については、罰金の算定方法も変更された結果、罰金額が50,400,000リエル(約12,600ドル)にまで大幅に引き上げられました。他方、②及び③については、12,8600,000リエル(約3,150ドル)となっています。

 近時、実務上も、労働省・内務省などによる外国人労働許可や在留許可の取得状況の確認を目的とした企業への立入り調査が活発化していることから、注意を要します。

3.税務登録上の代表者の労働許可の取得について
 外国人労働許可は、カンボジアにおいて外国人が労働する場合にその取得が義務付けられています(労働法第261条)。この点、非居住者である非業務執行取締役については、カンボジア国内において労働するものではないとして労働許可の取得は必要がないとされます(居住者/業務執行取締役については、当然に取得が必要です)。
 しかし、理論的根拠は説明されていませんが、税務登録上の代表者となっている(パテント税登録証書に掲載されている)取締役については、居住・業務執行の有無を問わず、外国人労働許可の取得が必要とされていることから(労働省指導2023年第110号等)、注意が必要です。
 労働許可不所持は、上記①に該当するとされ、約12,600ドルの罰金の対象となることになります。特に非居住者である場合については、その必要性が認識されることなく、労働許可が取得されていない事例が散見されますので、十分な注意が必要です。

 なお、税務登録上の代表者は、有限責任会社(現地法人)である場合には、原則として、取締役会議長(Chairman of Board)となりますが、取締役会議長が他の取締役に委任した場合には他の取締役がこれに就任することができます。
 他方、支店・駐在員事務所については、商業登録上の代表者が当然に税務登録上の代表者となります。いずれも、パテント税登録証書に記名及び顔写真の掲載があるため、判別は容易です。